RC外断熱とは?
RC外断熱(外断熱)の歩み
外断熱は、英語でExternal wall insulationと云います。RC外断熱あるいは外断熱工法としてヨーロッパでは、広く知られた工法です。
ドイツで1956年に始めて施工された建物と外断熱システムは、約70年近く経過した今も健在です。
今やヨーロッパではコンクリート住宅の外断熱は、RC外断熱として一般的な工法になり、住宅に限らず様々な建築においては外断熱工法(外張り工法なども含む)で施工されています。
日本でも外断熱の優位性が広く認知されつつあり、今後コンクリート住宅においては、RC外断熱が広く普及されていきます。
RC外断熱と内断熱そして外張り工法の違い
RC外断熱工法
RC外断熱は、鉄筋コンクリート造の構造体の外側に断熱材を設ける場合をいいます。
内断熱工法
内断熱は、鉄筋コンクリート造などの構造体の内側に貼る場合をいいます。今までは、この工法が主流でした。
RC外断熱が注目されているのは、内断熱では活かされることのなかったコンクリートの構造体の特徴が、RC外断熱では利点として様々に作用するからです。
外張り断熱工法
外張り工法は、木造や鉄骨造の建物の柱の外に貼る場合をいいます。
充填断熱工法
充填断熱工法は、木造や鉄骨造の主流だった工法で壁内部(柱と柱の間)に断熱材を入れる場合を言います。
ハイブリット断熱工法
ハイブリット工法は、外張り工法と充填工法の両方を行う工法で、高断熱・高気密化に有効ですが、コストも多くかかります。
熱橋(ヒートブリッジ)とは
建物躯体の断熱層を他の材料が貫通している等の理由で生じる、熱を伝えやすい部分を指します。
冬はヒートブリッジ部分から熱が逃げ、その部分に近い室内表面温度は他の部分に比べて低くなり、結露を生じることがあります。
夏は外の熱が侵入し、室内環境を悪化させます。鉄筋コンクリート造建物のバルコニーの基端部等は、構造熱橋(ヒートブリッジ)が生じる代表例です。
アーキスタジオの外断熱は弊社独自の対策により、躯体結露とは無縁です。
RC外断熱で得られる快適な住み心地
夏は外気の熱を遮断、冬は暖かい室内の熱を外に逃がしません。
なぜ、RC外断熱がいいのか!
それは、外断熱とすることで、コンクリートに室内側の熱を蓄熱することができ、コンクリートの温度を室内温度に近づけることができるからです。
そうすることで、室内温度が安定し室内の温度分布が一定になります。
こうして夏涼しく冬暖かい室内環境を少ないエネルギーで実現でき、中間期は自然通風を取り入れることで年間を通じて快適に過ごせます。
例えば…
暖房を切ったとしてもコンクリートに蓄えられた熱の放熱によって急激に冷えることがありません。
上部だけ暑く足元が冷えるといったことはありません。
内断熱のように夏の暑い日差しでコンクリートが夜間まで熱を持つこともなく、外断熱では冷房を切った後でも、蓄冷作用で涼しさを長く維持さえることができます。
このようにRC外断熱にすることで、コンクリートの蓄熱性が活かされ、夏涼しく冬暖かく室内の上下で温度差のない快適な空間にすることがでるのです。
また、構造体の寿命が飛躍的に伸びます。
RC外断熱とすることで外気温によるコンクリートの温度変化を小さくすることができコンクリートへのダメージが減らせます。また、風雨、紫外線の影響も抑えられます。その結果コンクリート構造体の寿命が飛躍的に伸びます。
RC外断熱工法のメリット ・デメリット
RC外断熱工法のメリット
- 高耐久性
コンクリートが雨・風・紫外線の影響、そして激しい温度差等の影響を受けないので耐久性が高い。 - 熱橋にならない
部分的に断熱材が切れる内断熱はそこがヒートブリッジ(熱橋)になり結露する危険性が高いが、RC外断熱はベランダ部分のように外に突出する部分以外はヒートブリッジ(熱橋)にならない。その突出部は部分的に断熱補強(内断熱)を行う。 - 安定性
コンクリートの蓄熱性が得られるので、急激な温度変化を招かずに室温が安定する。 - 高断熱性
RC外断熱はヒートブリッジ(熱橋)部分が内断熱に比べて少ないため、同じ断熱材の厚みでも高い断熱性能が得られる。 - 内装の自由度
RC外断熱の内装はコンクリートむき出しのインテリアからスタートさせるので自由度が高い。 - 高寿命
外装材をメンテナンスしていくことでコンクリートの劣化を防ぎ、構造体の寿命を100年以上に延ばすことができる。 - 自家火災に強い
コンクリートが室内側にあるので内断熱に比べて自家火災に強い。
RC外断熱工法のデメリット
- 内断熱に比べ、工法も限られ高価なイメージがある。外断熱の普及で徐々にコストの差は小さくなっている。
- 外装デザインの制約がある。石貼りなどの重い外装材は不向きである。
- 隣棟火災に不利といわれていましたが、ロックウールなどの断熱材を使用すれば、それを解消することができます。
コンクリートについて
コンクリート住宅と環境
RC外断熱住宅やコンクリート住宅は、地震はもちろん水害や強風にも強く、災害に対する安心感、安全性は別格です。
鉄筋コンクリートの構造体は、柱、梁、壁が一体となり耐震性と気密性に優れています。
特に、住宅規模であれば壁式鉄筋コンクリート造が、地震に対して最も強い構造になります。
そして、このモノコックの機密性の高さは、省エネ効果を生みます。
コンクリート住宅(RC住宅)の主要な素材であるコンクリートは、現状では環境負荷の高い素材です。
しかし、現在その生産過程で発生するCO2を大幅に削減する技術やコンクリートの中にCO2を封入する技術など様々な技術開発がなされています。
コンクリートがサスティナブルな素材として生まれ変わる日が、1日も早く訪れなくてはなりません。
外断熱工法が、コンクリートの環境負荷を軽減させる。
街の環境も変える
コンクリート住宅を外断熱にすることで、環境負荷の低減に様々な効果が生まれます。
ヒートアイランドの主たる原因は、太陽エネルギーを蓄熱容量の大きなアスファルトやコンクリートがため込み放熱する事にあります。
地球環境にとって負荷となるこの性質が、RC外断熱ではヒートアイランドの軽減に繋がり、建築内の居住空間にとっては利点となり作用するのです。
蓄熱と輻射熱効果が、理想的な温熱環境と省エネルギー効果生み出します。つまり暖かく涼しいここちよさを得ながら環境負荷の低減に役立つのです。
外断熱・コンクリート住宅のかなめ。鉄筋コンクリートと云う素材
鉄筋コンクリートは、19世紀のフランスで生まれました。
コンクリートは圧縮には強いが引っ張りには弱い、鉄は圧縮には座屈しやすいが引っ張りには強く、この二つが組み合わさることで強靭な素材となります。
熱膨張係数が、ほぼ同じあることなど、それぞれの長所と短所を補い合う理想的な素材として、建築や土木に広く使われるようになりました。
また、酸によって錆び強度が低下する鉄筋をアルカリ性のコンクリートが保護します。
鉄筋コンクリートの寿命は、コンクリートの中性化を防ぐことで伸びていきます。
自然環境の中で、コンクリートは表面から徐々に中性化していき、やがて鉄筋に到達します。すると鉄筋が酸化して錆び、体積が膨張してコンクリートを中から押し広げクラックを生みます。このクラックから雨水や二酸化炭素が、コンクリートの中性化が、クラック内部で起こり、鉄筋の錆を進行させる悪循環となり劣化を速めていくのです。
外断熱工法は、この中性化を抑える上で大変有利に働きます。
日本コンクリート工学会の資料によれば、内断熱工法の場合の耐用年数が、65年であるのに対し、外断熱工法の場合、その耐用年数は180年になるとの研究結果もあります。