2015年5月末に竣工してその2週間後に入居。早くも1年と半年ほどがすぎました。
長年住んでいたマンションのすぐ近所で(分割されて)売りに出された狭い敷地を見つけて購入したのが 2013年の夏。ハウスメーカーのモデルハウスや近所の建築事務所をめぐり歩き、最終的にアーキスタジオさんにお願いすることを決めたのが 2013年の秋。地盤調査を経て基本設計が2014年の春ごろ。詳細設計、施工業者の決定が 2014年の秋。着工が 2014年の暮れという時系列でした。
我が家の敷地は幅約2メートルの細長い通路状の先に長方形の土地がある、いわゆる旗竿地という形状です。もともとあった一軒家を撤去して、分割して売り出したという事情からでしたが、西新宿のモデルハウスの展示場ではハウスメーカーの営業さんから「そんな土地じゃあロクな家は建てられないよ」となぜか喧嘩腰に断言されてしまいました。「狭小住宅を建てる」といった類の記事や本を読み漁っていた私はまあ何とかなるとは思っていましたが、アーキスタジオの滝川さんには「問題なくいい家が建ちますよ」と力強くおっしゃって頂きました。
この家の最大の特徴はRC外断熱であるということです。(本で読んだ)知識・理屈としては比熱の大きなコンクリート筐体のその外側で断熱するということのメリットを理解していたつもりでしたが、実際にそこで暮らしてみるとその威力というか快適さには驚かされます。わが家では室内・室外各所合計12か所に無線接続の温度計を設置してリアルタイムでの測定を行っています。室温の変動をグラフで見ていただくのが早いと思います。
この図は東京都心で木枯らしが吹いた 2016年11月9日のものです。(午前0時から24時間)
午前12時あたりをピークとして室温が上昇しているのは3Fアトリウムです。この日は曇りがちでしたので30度そこそこですが、この季節のよく晴れた日だと40度ぐらいまで上昇することもしばしばです。グラフの下側10度から14度あたりを上下しているのは室外と、玄関風除室です。これは外気温の変動を直接受けています。その他の箇所、床下や各居室、バスルームなどは、すべて断熱材の内側で守られていますが、すべて19度あたりから21度ぐらいの間でほとんど温度の変動がないことがわかります。またアトリウムに接した3Fベッドルームの室温が日中わずかに上昇していること、アトリウムからの暖気の移送を受けて床下の温度が少し上がっていることも見て取れます。なおこの日は(もちろんこの日以前も)暖房器具は一切使用していません。
この家は、外気温がいかに変動しようとも、緩やかにそれを受け止めマイルドに室温を保つ、住人を甘やかす家です。
ところで、このアトリウムと呼んでいるエリア、最上階の南東側、幅1メートルに満たない全面ガラス張りの細長い空間がなかなかに素晴らしいもので、何かの魔法のようにも思えるほどです。前述のように晩秋から冬にかけては、日射を効率的に取り込みコンクリートの床に蓄熱を行い暖気を階下へと移送するという機能を持っています。
それに対して、夏の直射日光はこの空間でいったん受け止めることで居室へダイレクトに響くということがないという仕組みになっています。また雨を気にする必要のない洗濯物干場としての使い勝手の良さは言うまでもありません。
さて、我が家は敷地の形状から道路から細長い通路を経て奥に引っ込んだところが玄関になるわけですが、そのつくりに際して、かなり無茶なお願いをしたように思えます。どういうお願いをしたかというと、シンプルな感じがいいのだけどありきたりや貧相なのはダメで、上品な感じが望ましいのだけど豪華だったり豪華そうに見えるのは絶対に嫌で、それでもって玄関の扉は断然ウチ開きで、でも雨の降りこみの防止や脱いだ靴の始末(ウチ開きの玄関扉によって脱いだ靴が捲られないような工夫が必要)なんかは当然ちゃんと考えて欲しい、そういうことを一生懸命まくしたてたような記憶があります。
出来上がった我が家の外観は、全ての要望を取り込んで、さらに期待を上回るものでした。敷地の都合で通路の奥に仕方なく玄関が引っ込んでいるという感じがまったくなくて、逆にこういうアプローチの玄関のためにこういう敷地を選んだのではと思わせる感じです。これは文章だとちょっと伝わらないかもしれません。
もちろん、間取りも大変、気に入っています。アーキスタジオ 滝川さんありがとうございました。